やったこと

EU CSDD指令(企業サステナビリティデュー・ディリジェンス指令)への対応圧力が高まる中、環境デュー・ディリジェンス(EDD)を「既存の仕組みを活かして」実装するための実務的アプローチが整理されている。ポイントは「新システムをゼロから構築する必要はない」という視点の転換にある。

具体的な手順・工夫

まず理解すべき重要な視点転換

環境DDは従来型の「自社へのリスク管理」(例:サプライチェーン途絶リスク)とは異なる。「自社の活動が環境に与える負の影響を特定・評価・対処する継続プロセス」であり、対象は気候変動だけでなく、水質汚染・生物多様性・土壌汚染・化学物質リスクも含む。

既存インフラを活用した実装ステップ

  1. 現状棚卸し:自社が保有する環境ポリシー・EMS・CSR調査を一覧化(約80%の企業が何らかの環境ポリシーを保有)
  2. ISO 14001等のEMSに統合:既存のPDCAサイクルにEDDの特定・評価・対処プロセスを組み込む
  3. 人権DDとの連結:環境影響と人権影響は同じバリューチェーン上で重なることが多い(例:水質汚染→地域住民の健康影響)。統合することで工数を大幅削減できる
  4. CSRサプライヤー調査の拡充:既存の調達調査フォームに環境負の影響項目を追加・深化させる
  5. 優先順位付け:影響の深刻さ・広がり・可逆性に基づいて対応順位を設定する

現実の課題

環境ポリシーを保有する企業は約80%だが、EDDとして正式に機能させているのはわずか1〜2%。「持っているが整理されていない」状態から「プロセスとして継続的に回す」状態への移行が、多くの企業の実務的な課題となっている。

得られた結果(制度対応の現状)

EU CSRDおよびCSDD対応が求められる企業(特に欧州進出企業・欧州サプライヤー)では、EDDの体制構築が急務。既存EMS活用により、ゼロベース構築より大幅にコストと工数を削減できる。

他社が参考にすべき点

  • まず「自社に何があるか」の棚卸しから始める。多くの企業は活用できる既存資産を持っているのに使えていない
  • ISO 14001取得済みなら、そのサイクルにEDDを組み込むことが最も効率的
  • 人権DDと環境DDを別々に進めると二重の工数がかかる。バリューチェーン・マッピングを統合して進めることが有効
  • 「完璧な体制を作ってから始める」より「現状の延長線上で一歩踏み出す」ことで欧州規制への最低限の対応を確保できる