やったこと
EU向けに鉄鋼・アルミ・セメント・肥料・電力・水素を輸出する日本企業が義務対応しなければならないCBAM(炭素国境調整メカニズム)の具体的な排出量算定手順をアスエネが解説。2025年の規則改正(50トン免除廃止)を受けて、中堅輸出企業にも実務対応が急務となっている。
具体的な手順・工夫
ステップ1: 埋め込み排出量(Specific Embedded Emissions, SEE)を算定する
基本式: SEE = (直接排出量 + 間接排出量) ÷ 純生産量(トン)
- 鉄鋼・アルミ・水素は間接排出量を除外し、直接排出量のみ計算
- セメント・肥料のみ間接排出量(電力使用×電力排出係数)を加算
ステップ2: 直接排出量を計算する
直接排出量 = 活動量 × 排出係数 × 酸化係数
- 活動量: 使用した燃料・原料の量
- 排出係数: 単位当たりCO2量(IPCC等の係数を使用)
- 酸化係数: 不完全燃焼の補正(通常0.98〜1.0)
ステップ3: 証明書コストを計算する
CBAM証明書費用 = 埋め込み排出量 × 証明書価格 × CBAMコーヒーシェント − 外国炭素価格のクレジット
- 証明書価格はEU-ETS市場連動(2026年Q1時点で約€75/トン)
- CBAMコーヒーシェントは段階的引き上げ: 2026年2.5% → 2034年100%
ステップ4: 施設単位のデータを準備する
企業全体の平均値は使用不可—施設ごとに燃料・原料・電力の消費実績データを整備する。計測値(measured value)を使えば費用が削減できるが、第三者検証が必須。デフォルト値(default value)は10〜30%割増になるため、早期に計測体制を整えるほどコスト有利。
得られた結果
2025年の規則改正で年間50トン未満の輸出免除が廃止されたため、中堅輸出企業も正確な施設データ準備が避けられなくなった。第三者検証を受けた計測値を提出した場合、デフォルト値比でCBAM費用を最大30%低減できる。
他社が参考にすべき点
- EU向け輸出がある製造業(特に鉄鋼・アルミ・化学・セメント)は今すぐ施設ごとの燃料・原料・電力消費記録を整備すべき
- 計測値 vs デフォルト値の費用差(最大30%)は第三者検証コストを上回るケースが多い—早期の設備計測への投資が回収できる
- 日本にはJ-クレジットがあるためCBAM証明書費用から差し引ける—J-クレジット活用戦略とCBAM対策を一体で検討する
- 2034年に向けてCBAMコーヒーシェントが100%に到達するため、排出量削減対策と証明書購入コストのシミュレーションを今から行う
