研究の概要

データセンターの急増に伴い、そのエネルギー消費とCO₂排出量が深刻な問題となっています。これまでの研究の多くは「運用時の炭素排出(operational carbon)」にフォーカスしていましたが、本研究はサーバー等のハードウェア製造・廃棄に伴う「エンボディド・カーボン(embodied carbon)」も含めたライフサイクル全体での最適化を実現します。

研究チームは、熱ストレスによる非線形的なハードウェア劣化(老化)モデルをワークロード・スケジューリングと統合。熱暴露の蓄積がどのように部品の交換頻度を高め、最終的にエンボディド・カーボンを押し上げるかを定量化し、地理的に分散した複数のデータセンターを対象とした分散最適化フレームワークを構築しました。

主な発見・成果

  • ライアプノフ最適化 × 分散最適化の組み合わせ: 各データセンターが独自の情報を秘匿しながら協調してスケジューリングを最適化できる「プライバシー保護型」フレームワークを実現
  • 既存手法比で最大13.0%のカーボン削減: 従来の運用炭素のみを考慮した手法と比較して、ライフサイクル全体でのCO₂排出を13.0%削減
  • 12.6%のオペレーションコスト削減: カーボン削減と運用コスト削減を同時に達成し、ビジネス的実現可能性を裏付け
  • 非線形老化モデルの重要性: 一般的な線形劣化モデルを使った場合と比べ、老化の非線形効果を組み込むことで最適化精度が大幅に向上

実務への応用

データセンターを保有・運用する企業がScope 1・2のみならず、ハードウェア調達や廃棄を含む「エンボディド・カーボン(Scope 3相当)」まで含めたカーボン戦略を立案する際に直接活用できます。特に以下の実務的示唆があります:

  1. ワークロード配分戦略の見直し: サーバー温度・稼働率の最適化はエネルギー節約だけでなく、ハードウェア寿命延長→廃棄炭素削減にも直結する
  2. 複数拠点でのGHG集計方法の精緻化: 地理的分散環境での分散型最適化アプローチは、実際の企業グループ内マルチサイト運用に応用可能
  3. 調達・設備更新計画との連動: 熱管理計画を設備ライフサイクル管理と統合することで、TCO(総保有コスト)とカーボンフットプリントを同時最適化できる