概要(3〜5文)
本章は、「不確実性」という言葉をどのように使うべきかを考える内容である。人はそれぞれ異なる前提や経験を通じて世界を見ており、同じ出来事でも認識や判断が一致するとは限らない。そうした違いを捨象して一つの見方にまとめる「最大公約数社会」から、複数の異なる見方を併存させる「最小公倍数社会」への転換が示唆されている。脱炭素のように将来予測、価値判断、利害関係が絡むテーマでは、「不確実性」を単なる障害や説明責任の回避に使わず、何が分かっていて何が分からないのかを整理することが重要になる。
ポイント
- 「不確実性」は、予測の幅だけでなく、前提条件・情報・価値観の違いも含む言葉として扱う必要がある。
- 同じデータを見ても、立場や経験が異なれば異なる世界像が形成される。
- 多数派に合わせて共通項だけを残すのではなく、異なる認識を保ったまま合意点を探る視点が求められる。
- 不確実性を理由に議論を止めるのではなく、複数のシナリオや判断基準を明示することで、対話の土台にできる。
- 脱炭素施策では、科学的な不確実性、制度変更の不確実性、事業・生活への影響に関する不確実性を区別すると議論しやすい。
実務への示唆
脱炭素の計画や説明では、「不確実です」と一括りにせず、対象・期間・前提・影響範囲を明記し、複数の見通しを示すことが有効である。また、社内外の関係者が異なる世界認識を持つことを前提に、共通の結論を急ぐよりも、相違点を可視化したうえで意思決定の条件を合意すると、納得感と柔軟性を高められる。
