概要

本稿は、非財務情報の作成・開示を担う担当者が経験する複数の「夜」を束ね、実態を無理なく、普通に伝えられる社会のあり方を考える内容です。経理部で証憑を綴じる作業、前任者のフォルダや他社のPDFを参照する作業、質問票の回収、生成AIによる文章作成など、開示実務の具体的な場面が描かれています。これらの場面は、情報開示が単なる文章作成ではなく、証拠・参照先・過年度情報・関係会社からの回答をつなぎ合わせる仕事であることを示します。さらに、公開直前の判断や、集計途中で見つかった取り違えをどこまで公表するかという迷いを通じて、透明性と説明責任の重要性を浮かび上がらせています。

ポイント

  • 担当者は、証憑、過去資料、他社表現、SNS上の反応、取引先への質問票など、多様な情報源を組み合わせて非財務情報を作成している。
  • 前任者のフォルダや前年の文章に依存する実務では、情報の根拠や更新履歴が見えにくくなりやすい。
  • 生成AIに前年の文章と今年の数値を貼り付ける場面は、効率化の可能性と同時に、入力情報の正確性や出典管理の必要性を示している。
  • 公開ボタンを押す瞬間は、作業の完了だけでなく、企業として情報に責任を持つ区切りでもある。
  • 集計途中の取り違えをどう扱うかという問題は、誤りを隠さず、訂正や経緯を説明できる仕組みの必要性を示唆する。

実務への示唆

非財務情報の信頼性を高めるには、開示文書を作る段階ではなく、日常の業務プロセスに証拠、参照元、更新履歴、確認者を組み込むことが重要です。生成AIや既存資料を活用する場合も、数値の根拠と文章の出典を確認し、誤りが判明した際の訂正ルールまで事前に整備する必要があります。

出典

「証拠なき非財務情報」(10)実態を普通に伝えられる社会へ