概要
本章は、統合報告書の締切前夜に、担当者が生成AIの画面へ数値を貼り付ける場面の続きから始まります。焦点となるのは、非財務情報をPDFとして公開した後に、数値の出所、元データ上の位置(座標)、計算過程といった検証に必要な情報が見えにくくなる問題です。見栄えのよい開示資料が完成しても、第三者がその数値を再現・検証できなければ、情報は「証拠なき非財務情報」になり得ます。生成AIの利用を含め、作成プロセスと根拠をどのように残すかが問われています。
ポイント
- PDFは閲覧や配布には適している一方、表計算ファイルやデータベースとのつながり、セルの位置、参照元を追跡しにくい形式です。
- 数値だけを転記すると、どの資料のどの箇所を使ったのか、単位や期間、対象範囲が失われ、結果の妥当性を確認しにくくなります。
- 計算式、前提条件、換算係数、推計・補正の履歴が開示資料から切り離されると、再計算や誤りの訂正が困難になります。
- 生成AIは文章や数値の整理を効率化できますが、入力データの由来や出力の正確性を自動的に保証するものではありません。
- 開示の完成形だけでなく、根拠資料、データ辞書、計算ログ、承認履歴を含む証跡の設計が重要です。
実務への示唆
非財務情報を作成する際は、PDFを最終成果物と割り切り、元データのファイル名・シート名・セル位置、使用した係数、計算式、更新日、担当者を別途記録しておく必要があります。生成AIを使う場合も、入力値と出力結果を保存し、人手による照合・承認を組み込むことで、開示後の検証可能性を確保できます。
