概要

環境価値の議論が難しい理由は、電力そのものの価値と、再生可能エネルギー由来であることなどの環境価値が、同じ電力取引の中で重なって扱われるためです。電力は物理的には系統を通じて混ざりますが、証書や契約によって環境価値だけを別に移転できます。その結果、誰がどの排出削減を主張できるのか、またScope3における排出や削減の帰属をどう整理するのかが論点になります。環境価値を正しく扱うには、kWhの供給と属性情報・証書・契約上の権利を分けて確認する必要があります。

ポイント

  • 電力には、実際に消費されるエネルギーとしての「kWh」と、再エネ性や排出削減効果を示す「環境価値」という二つの側面がある。
  • 物理的な電力の流れと、環境価値の帰属・移転は一致しないため、購入者、発電者、需要家、証書保有者の権利関係を明確にする必要がある。
  • 同じ環境価値を複数の主体が利用すると、二重主張や二重計上が生じる。証書の償却、契約条件、対象期間などの管理が重要になる。
  • Scope3の算定では、排出量の「誰のものか」だけでなく、どの制度・基準に基づき、どのデータと環境価値を使ったかを説明できなければならない。
  • 環境価値は単なる付加情報ではなく、脱炭素目標、再エネ調達、開示、取引先との責任分担をつなぐ会計・契約上の要素である。

実務への示唆

再エネ電力を調達する際は、kWhの供給契約と環境価値の移転・償却条件を分けて確認し、対象拠点、期間、証書の種類、二重計上防止策を記録しましょう。Scope3や気候関連開示に利用する場合は、算定基準と主張可能な環境価値の範囲を社内で統一し、サプライヤーとの証跡を保存することが重要です。

出典

第1章 環境価値はなぜ難しいのか