研究の概要
スウェーデンのAnna Carlssonらの研究チームは、電気自動車(EV)の牽引モータにおいてレアアース材料を使用せずに高効率を実現するため、ソフト磁性複合材料(SMC)をワウンドフィールド同期モータ(WFSM)の固定子に適用する研究を実施した。従来のEVモータでは希土類元素を含む永久磁石同期モータ(PMSM)が主流だが、サプライチェーンリスクや価格変動・環境負荷が課題となっている。電気励磁同期モータ(EESM)はレアアース不要の代替として注目されているが、従来は軸流型での応用が中心だった。本研究では、ラジアルフラックス型EESMの固定子にSMCを適用し、固定子SMC・回転子0.35mm珪素鋼(NO35)の組み合わせが最適であることを発見した。
主な発見・成果
- WLTPドライブサイクル全体での効率89.7%を達成し、従来のPMSMと比較して1.4ポイント向上した
- レアアース材料の完全排除に成功し、資源調達リスクと環境負荷を同時に低減した
- より厚い積層鋼板(粗加工が可能)を使用できるためコスト削減が実現し、製造コスト競争力が高まった
- ラジアル型EESMへのSMC適用は本研究が初の事例であり、新たな設計領域を開拓した
- 複数のSMC材料と積層厚さを系統的に評価したことで、材料選択の最適化指針が明らかになった
実務への応用
EVサプライチェーンにおけるレアアース依存リスクが地政学的に高まる中、本研究の成果はOEM・部品サプライヤー・モータ設計者にとって重要な代替技術の方向性を示している。実務担当者は、①新規EV開発における永久磁石代替モータ技術の評価候補としてSMC-EESMを加える、②調達リスク低減のための技術多様化戦略にWFSMを位置づける、③製造コストと効率のトレードオフ分析において本研究のWLTP効率データを参照基準として使用する、の三点を検討できる。特に日本の自動車メーカーにとっては、中国に偏重するレアアースサプライチェーンの脱リスク戦略としての技術的実現可能性を示す重要な知見となる。