研究の概要
再生可能エネルギーの比率が高まるにつれ、電力系統の計画・運用シミュレーションに求められる計算コストが急増している。特に国際連系線(インターコネクター)を通じた電力フローの予測は、再エネ変動性の影響で複雑化しており、従来の簡略モデルでは「過去の歴史的輸出入データを外生的に与える」手法が取られてきた。この手法は再エネ比率上昇後の系統では精度が劣化する問題があった。本研究は機械学習を用いて、再エネ発電量・需要予測などのノード別時系列データから連系線フローを推定するサロゲートモデルを開発し、k近傍法とフィードフォワードニューラルネットワーク(SQUモデル)の性能を比較した。
主な発見・成果
カスタム損失関数(物理的に不可能なフローパターンを防止)を組み込んだニューラルネットワークSQUモデルが未学習の気候年データへの汎化性でKNNを大幅に上回った。単一ノード電力系統最適化モデルにSQUモデルを統合した場合、欧州規模の詳細シミュレーション結果と「意思決定に関わるレベル」で同等の精度を維持しながら、計算時間を最大約500倍短縮することに成功した。物理制約を損失関数に組み込む設計が汎化性能の鍵であり、単純なデータ適合より物理整合性を重視したモデル設計が実務展開に適することを示した。
実務への応用
電力系統の計画業務・研究機関・エネルギーシステムモデル開発者が直接活用できる知見である。①従来は計算量が多すぎて実行困難だった高時間分解能・多シナリオの系統シミュレーションを現実的な時間内で実行できるようになる。②再エネ大量導入後の系統計画(送電線増強・連系線容量設計)のシナリオ分析に機械学習サロゲートの導入を検討すべき。③日本においても地域間連系線の容量設計や離島系統の再エネ統合計画において高速近似モデルの実用化が意思決定支援に寄与する可能性がある。