研究の概要

ペロブスカイト太陽電池は従来のシリコン太陽電池を凌駕する変換効率ポテンシャルを持つとされてきたが、スズ-鉛混合(Sn-Pb)ペロブスカイト材料の不安定性(酸化劣化・結晶品質の低下)が実用化の障壁となっていた。本研究(Ma・Zhao他、Nature Energy、2026年5月)は、スズの酸化(Sn²⁺→Sn⁴⁺)を抑制する安定化インク技術を開発し、全ペロブスカイトタンデム太陽電池(広バンドギャップ層と狭バンドギャップ層の積層構造)において独立認証機関による公認効率29.56%を達成した。

主な発見・成果

従来の最高効率は25-28%台に留まっており、29.56%の公認認証効率(独立認証機関による測定値)は全ペロブスカイトタンデム分野の新たなマイルストーンに位置する。安定化インク技術の核心は、スズ酸化を抑制する添加剤設計と結晶成長制御の組み合わせにある。全ペロブスカイトタンデムはシリコンを含まず、より低コスト・フレキシブル製造が可能な材料系であり、理論効率上限は約45%と算出されている。今回の29.56%達成は「30%の壁」突破に向けた重要な技術的進歩である。太陽光発電コストの中長期低下とモジュール面積効率の向上に直結する研究成果である。

実務への応用

太陽光発電の大規模導入・設備投資計画を立案する担当者への示唆は次の通りである。①ペロブスカイトタンデムが30%超の認証効率を安定して達成・量産可能になれば、現行シリコン単接合(21-24%)に比べ同面積で20-40%多い発電量が得られ、設置面積制約のある建屋屋根・都市部への太陽光普及を大幅に前進させる。②ペロブスカイト太陽電池の商用化タイムラインを考慮した長期太陽光投資計画(2030年代以降の設備更新シナリオ)の策定が求められる。③材料のスズ・鉛含有は環境規制面で課題があり、廃棄・リサイクル体制の整備と合わせた製品ライフサイクル管理が将来的に必要となる点を認識しておくべきである。