研究の概要

自動運転車(CAV)と一般車が混在する交通環境において、CAVをどのように制御すれば消費エネルギーを最小化できるかは、交通脱炭素化の重要課題である。本研究では、データ駆動型予測制御の一手法であるDeePC(Data-Enabled Predictive Control)の計算コスト課題を解消する新手法「D3PC(Direct Data-driven Predictive Control)」を提案している。

D3PCは従来のDeePCと比較して、履歴データの量に依らず計算時間がほぼ一定となるよう予測機構を再定式化しており、エッジデバイスや車載コンピュータへの実装を現実的なものにする。これにより、学術的な制御理論を実車に近い環境で展開するための橋渡しとなる研究として位置づけられる。

主な発見・成果

シミュレーション評価では、D3PCはルールベースクルーズコントロールとの比較で10.71%の消費エネルギー削減を達成した。また従来のDeePC比でも3.80%の改善が得られており、計算速度の向上とエネルギー効率改善を同時に実現した。

混合交通流(CAV混入率50%未満想定)での有効性が確認されており、完全自動化が達成されるまでの移行期における現実的なアプローチとして有望である。計算時間が履歴データ量に依存しない性質は、リアルタイム制御が要求される車載環境への適用可能性を大幅に高める。

実務への応用

物流・旅客輸送事業者がCAVや先進運転支援システム(ADAS)の制御アルゴリズムを評価・選定する際、D3PCの10.71%省エネ効果はGHG削減目標との直結性が高い。Scope 1排出削減のKPIとして燃料消費量を管理している企業において、CAVフリート導入の投資対効果試算の根拠データとして活用できる。また、混合交通環境(完全自動化前の過渡期)でも効果が出る点は、短中期での実装計画を持つ企業にとって特に有用な知見である。