やったこと
2026年6月5日、アスエネ主催のサステナビリティ実務責任者向けラウンドテーブル(約60名参加)で、KDDI・日立建機の担当者がSSBJ(サステナビリティ基準審議会)対応の実務を詳細に報告した。両社とも「第三者保証に耐えるデータ体制の構築」という共通の壁に直面しており、それぞれ異なるアプローチで突破口を開いた事例として注目される。
具体的な手順・工夫
KDDIの場合:150社以上のグループ会社CO2一元管理
- Scope2(通信設備・データセンター電力)が主要排出源。全国の基地局の電力契約・請求書データは「フォーマットが異なるPDFが大量に存在する」という現実課題から出発した
- 解決策:システム会社の支援を受けて毎月PDFをデータ化し、入力後に所属長承認フロー・確認記録を整備。「保証に耐えるエビデンス管理」として根拠資料を体系的に保管
- Scope3(サプライヤー製造等)の管理も進行中。課題は「将来予測の不確実性とサプライヤーデータ収集の困難さ」
- SSBJ対応では「明確な正解がない中で自社としての判断軸を定めることが最難関」と担当者が強調
日立建機の場合:グローバル製造業のExcel脱却
- 国内SSBJ対応と欧州CSRD対応を並行して準備。全社横断プロジェクト体制で推進
- 従来のExcel集計から専用システムへ移行。拠点ごとに異なる報告単位・入力ルールの統一が最大の難所
- システム選定の判断基準:「操作性だけでなく、制度理解や実務判断を支える伴走支援があるかどうか」が決め手
- グローバル拠点課題:担当者交代のたびに前提知識が失われる問題に対し、システムへの手順埋め込みと継続的なトレーニングで対応
- 監査法人への対応方針:「指摘を受け身で受け入れず、コンサルティング会社と連携してどこまで開示が必要か精査し、理論武装した上で対話する」姿勢を徹底
得られた結果
- 参加者(大企業サステナビリティ担当者約60名)の全体満足度96%、次回参加希望9割以上
- 参加者アンケートで浮上した追加ニーズ:保証取得に向けた内部統制設計、Scope3算定の高度化、サプライヤー巻き込みの実践事例
- 「制度対応を目的化せず、自社の承認プロセス・グローバル体制に即した継続的実装こそが信頼性を左右する」との共通認識が形成された
他社が参考にすべき点
- 電力請求書のPDF多様性問題は普遍的:大企業・通信インフラ系企業に限らず、複数拠点を持つ企業なら必ず直面する。外部システム会社との協力でデータ化を進め、承認ループを設計してから算定を開始するのが近道
- 「判断軸の文書化」がSSBJ対応の核心:正解のない選択(マテリアリティ基準・開示範囲・Scope3境界設定等)は、自社の判断根拠を記録しておかないと保証審査で詰められる。早期に「なぜこう判断したか」の文書を整備すること
- グローバル拠点のシステム選定では「伴走支援」を必須条件に:ソフトウェアの機能比較だけでなく、制度改正時のアップデート・担当者交代時のサポート体制を契約前に確認する
- 監査法人対話は「理論武装→対話」モデルで:指摘への受け身対応では開示範囲が際限なく拡大するリスクがある。専門家と連携して「どこまでが合理的な開示範囲か」を先に整理してから対話するアプローチが有効(製造業・通信業など複雑なScope3構造を持つ業種に特に推奨)