概要
SBTi(Science Based Targets initiative)は2026年6月11日、Corporate Net-Zero Standard Version 2.0をリリースし、Scope 2(電力由来)の温室効果ガス排出量の取り扱いを大幅に強化した。本記事では、V2.0でのScope 2実装に必要な変更点と手順を解説する。
実装ステップ
Step 1:現在の算定方式を確認する
現行でマーケットベース(電力購入証書・Iトラック)で算定している場合、V2.0ではロケーションベース(物理的な系統排出係数)への移行が必要となる。まず自社のScope 2算定方法を棚卸しすること。
Step 2:目標タイプを選択する
V2.0では2種類の目標タイプが選べる:
- 排出削減ターゲット:ロケーションベースで測定したScope 2排出量の絶対量または強度で削減率を設定
- 低炭素電力アラインメントターゲット:電力消費量に占める低炭素電力の割合で目標設定
⚠️ 急速に電力消費が拡大している企業(データセンター等)は、排出削減ターゲットが必須となる点に注意。
Step 3:市場手段(EAC・PPA等)を評価する
V2.0では市場手段に3原則(Near・New・Now)が課される:
- Near(近接性):電力調達手段は自社が消費する地域の電力グリッドに対応したものであること
- New(新規性):資産年齢15年未満のプロジェクト由来の証書を優先すること(追加性の確保)
- Now(同時性):年間マッチングが現在の最低要件だが、時間単位マッチング(24/7 CFE)を推奨
Step 4:実装優先順位に従って行動する
V2.0が定める優先順位:
- 直接行動を最優先:省エネ、化石燃料需要削減、オンサイト再エネ設置
- 活動プール(グリッド改善):電力系統の脱炭素化に貢献する共同購入等
- 市場手段(EAC・PPA):上記の補完として活用
使うツール・標準
- GHGプロトコル Scope 2ガイダンス:ロケーションベース vs マーケットベースの計算基準
- RE100ガイドライン:時間単位マッチング(時刻一致)の要件と適合する証書基準
- SBTi Corporate Net-Zero Standard V2.0:https://sciencebasedtargets.org/
- AIB(欧州)・J-クレジット(日本):Near・New原則に適合する証書の発行機関
成功のポイント
- 既存のRE100目標やGHGプロトコルに沿っている場合、V2.0要件の大部分は既に満たしている可能性が高い
- 電力消費の急増期(AI投資・工場増設等)では、証書購入だけでは対応できない点を経営陣に早期に共有する
- 「near」要件のため、海外発電の証書を日本消費分に使う従来手法は適用不可となる場合がある
日本企業への適用
日本では系統排出係数が地域(10電力エリア)ごとに異なる。ロケーションベースへの移行では、環境省が毎年公表する「電気事業者ごとの排出係数」を使用すること。国内のPPAや非化石証書(FIT証書を含む)については、Near・New原則との適合性をサプライヤーに確認する必要がある。特にFIT証書は再エネ電源の設置年度(15年以内かどうか)と調達エリアの確認が重要。