やったこと
五十鈴株式会社のicサーキュラーソリューションのコラムは、グリーンサプライチェーン構築のための5つの実行プロセスを整理した。Scope3削減を「算定」から「契約条件への組み込み」まで一連のサイクルとして設計するための実務手順を、積水ハウス・ユニリーバ・日立製作所の先行事例とともに提示している。
具体的な手順・工夫
プロセス1:境界設定とカテゴリーの優先順位付け
4つの評価軸で取り組む領域を絞り込む:
- 排出規模の大きさ:Scope3全体の何%を占めるか
- 削減のポテンシャル:技術革新・取引条件変更で削減余地があるか
- データ取得の容易性:一次データを取れるサプライヤーがいるか
- ステークホルダーの関心:投資家・顧客から強い開示要請があるか
積水ハウスの事例:Scope3の約8割を占める「カテゴリ11(居住時エネルギー消費)」を最優先に設定。ZEH普及を経営の柱に据え、製品設計段階から排出域を再設計。
プロセス2:二次データから一次データへの段階的移行
- まず業界平均値(二次データ)で全体像を把握
- 主要サプライヤーへのデータ提供要請とITシステムによる収集体制整備を並行して進める
- 一次データへの移行により「サプライヤーの削減努力が数値に反映され」PDCAが機能する
ユニリーバの事例:「クライメート・プロミス」の枠組みで主要サプライヤーに製品ごとの排出量実測データ共有を公式要請。共通算定プロトコル+ITツールで数万品目を直接把握し、ホットスポットをピンポイントで特定。
プロセス3:算定結果の可視化と重点領域の特定
- Scope1〜3・全15カテゴリの排出寄与度をグラフ化
- パレート分析で排出量の80%を占める上位20%の品目・拠点を特定
- 内部炭素価格(ICP)を使って将来の炭素税支払い額をシミュレーション
- ダッシュボードで基準年度からの削減推移を月次モニタリング
日立製作所の事例:Scope3の約9割が「カテゴリ11(製品使用段階)」と特定し省エネ性能向上を最重点化。ICP 14,000円/tを設定し設備投資の意思決定に炭素コストを組み込む。
プロセス4:サプライヤーとのグリーン契約への改定
契約条項に組み込む4要素:
- データ開示の義務化:一次データ項目・報告頻度・共通フォーマットを明記
- インセンティブ設計:削減実績の大幅改善 → 価格優遇・優先取引権付与
- 共通基準の策定:算定方法の統一・コミュニケーションルール確立
- 是正措置の定義:目標未達時の改善計画提出義務・技術支援体制をあらかじめ合意
プロセス5:上流〜下流の一貫したエンゲージメント
- Tier1サプライヤーへのSBT水準目標設定要請
- Tier2以下はTier1経由の間接エンゲージメント(直接アクセス可能な先は直接対応)
- サプライヤーの脱炭素化を「支援するパートナーシップ」として設計(コスト削減交渉ではなく共創)
得られた結果
- グリーンサプライチェーンを「管理フレームワーク」として機能させることで、Scope3削減が投資判断・調達方針・製品設計に接続される
- 2026年以降のCSRD・SB253等の規制対応にもこのプロセスが直接活用できる基盤となる
他社が参考にすべき点
サプライチェーン管理・ESG推進担当(製造業・素材業・商社)向け:
- 「境界設定→優先順位付け」を最初に合意する——全カテゴリを一律に取り組もうとすると工数が膨大になる。パレート分析で上位20%の排出源に集中投資することが現実的な削減加速の鍵。
- グリーン契約のインセンティブ設計が普及速度を決める——データ開示を義務化するだけでなく、削減実績に対する「価格優遇・長期取引優先権」を設計することで、サプライヤーが能動的に動く仕組みが生まれる。
- ICPを設定して投資の意思決定に炭素コストを組み込む——日立の14,000円/tのように、炭素価格を設備投資の評価指標に組み入れることで、省エネ投資の優先度が経営判断として明確化される。