やったこと
2026年6月17日にISOが公開した世界初のネットゼロ移行計画国際規格案「ISO/DIS 14060 Net zero aligned organizations」の要件を分析し、確定前から先行対応できる準備手順を整理した。ISO 14060は企業・法人・NGO・学術機関などの組織を対象とし、第三者による検証が可能なネットゼロ移行計画の国際標準を定めるものである。
具体的な手順・工夫
既存規格との棲み分けの理解 ISO 14060は既存GHG関連規格と役割分担がある。ISO 14064シリーズ(GHG排出量の算定・報告・検証)→ ISO 14067(製品カーボンフットプリント)→ ISO 14068-1(カーボンニュートラリティ、2023年発行)という段階的体系の上位に位置し、「ネットゼロへの移行計画を立て、実行し、第三者検証する」フレームワークを提供する。2022年公開のIWA 42の正式規格版として位置づけられる。
ISO 14060の主な要件 規格案が求める要件の核心は以下の通り。
- 中間目標・長期目標の設定(数値と期限を明記)
- 目標設定後2年以内に詳細な移行計画を公表
- 移行計画に含めるべき5要素:①信頼できる定量データ、②戦略を事業モデルへ統合するプロセス、③行動のタイムライン、④進捗の測定・報告・検証方法、⑤カーボンクレジット利用計画
- 対象範囲はScope 1・2・3(バリューチェーン上流・下流含む)
先行対応のロードマップ 規格確定(2026年年内投票予定)を待たずに以下を着手できる。 ①Scope 1・2・3の正確な排出量把握(ISO 14064準拠の算定体制構築) ②中間・長期のネットゼロ目標設定と文書化 ③残余排出に対するカーボン除去・貯留計画の策定 ④第三者検証プロセスの内部整備
中小企業向けの対応軽減策 ISO 14060は中小企業専用セクションを設けており、最も重要な排出カテゴリへの集中や、進捗報告を毎年ではなく3年ごとにする選択肢が認められる見込みである。
得られた結果
ISO 14060の要件の多くはScope 1〜3の正確な排出量把握を前提とするため、GHG算定基盤を整備した企業は規格対応の大半を既存作業の延長として実施できる。カーボンクレジット利用計画の事前策定により、残余排出相殺のコスト管理も可能になる。
他社が参考にすべき点
規格がパブリックコメント段階にある今が最も効率的な対応準備のタイミングである。170カ国を超える各国標準化機関が関与しており、グローバルで事業展開する企業は特に早期対応の優位性が大きい。まずISO 14064準拠のGHG算定体制を整え、SBT(科学的根拠に基づく目標)と整合したネットゼロ目標を文書化することが「規格対応への最短ルート」となる。製造業・商社・金融機関など国際取引が多い大企業から対応を優先すべきである。