やったこと
キーエンスの省エネ工場コラムは、製造業がカーボンニュートラルを達成するための体系的アプローチとして「カーボンニュートラルPDCAサイクル」「EnpI(エネルギー性能指標)」「FEMS(工場エネルギー管理システム)」の3要素を解説。化学品・鉄鋼・自動車・食品等の業界別取り組み事例と、工場での省エネ優先施策を整理した。
具体的な手順・工夫
カーボンニュートラル達成のPDCAサイクル
Plan(現状把握と実施計画)
- エネルギーが使用されている工程・場所・使用状況を把握
- 省エネできる項目を洗い出し、メリット・デメリット・経営状況を考慮して実施項目を選定
Do(取り組み実施)
- 部門代表の選定・全員参加型体制整備・達成基準値(ベースライン)の設定
Check(効果検証)
- 生産設備にセンサ等のモニタリング機器を取り付け、エネルギー使用量を計測・見える化
- 運転状況と紐づけてエネルギー消費の把握
Action(計画見直し)
- 目標との差・運用状況・新規設備の運転状況を確認
- 現場の声を聞きながら施策・管理方法の見直し・新たな省エネ施策の追加を検討
EnpI(エネルギー性能指標)の活用
- EnpIとは「組織が定めたエネルギー性能の定量的な値」
- 具体的指標例: エネルギー使用量(GJ・kWh)、ピーク電力(kW)、用途別エネルギー消費量、エネルギー消費原単位
- 立場別の使い分け: BU長はエネルギー使用量と原単位、製造部は過去比較と原単位
- 導入効果: 各立場・目的に応じた値を設定でき、それぞれの立場で効果を検討可能に
FEMS(Factory Energy Management System)の効果
- 機能: 受配電設備・生産設備のエネルギー管理・使用状況把握・機器の制御を一元化
- 「本当に必要な設備か」「不要時に停止しているか」「過大な負荷がかかる設備はないか」を特定可能
- エネルギー原単位(単位エネルギー使用量に対する消費量)の算出も可能
- 活用範囲: 省エネ設備転換の可能性検討まで幅広く対応
業界別カーボンニュートラルへの取り組み
化学品製造プロセス
- エクセルギー損失の最小化を推進
- 熱分解工程の触媒分解プロセスへの転換
- 熱利用が多い蒸留工程への無機多孔体膜プロセス導入
- バイオマス資源・高濃度CO2の原料利用
鉄鋼プロセス
- 高炉プロセスでのCO2排出が最大課題
- 高炉排気口へのCCUS設備設置
- 水素還元製鉄(コークス代替に水素を使用)の研究開発
得られた結果
- FEMSを導入することで「不要な設備の稼働」「過大な負荷がかかる設備」の特定が可能になり、エネルギーロスを定量的に把握して優先順位付けができる
- PDCAと組み合わせることで、「計画なき省エネ投資」による損失リスクを低減できる
他社が参考にすべき点
製造業の省エネ・設備担当向け:
- FEMS導入はカーボンニュートラル施策の「測定基盤」として先行投資が有効——どの設備が電力を無駄に使っているか特定する前に投資先を決めると費用対効果が下がる。FEMS → EnpIで現状把握 → PDCA という順序が重要。
- 業界別に対応すべきホットスポットが異なる——化学品は熱分解プロセス(エクセルギー損失)、鉄鋼はCCUS・水素製鉄、食品は蒸気利用効率化が主要課題。業界のコンセンサスに合わせて施策を絞る。
- EnpIを立場別に設計すると組織全体でコミットメントが生まれる——BU長・製造部・現場の各レベルで「自分たちの指標」を持つことで、カーボンニュートラルが現場事ではなく会社事になる。