やったこと
環境省・みずほリサーチ&テクノロジーズが策定した「サプライチェーン排出量の算定と削減に向けて」(2023年3月)は、GHGプロトコルScope3基準に整合した日本版の実務ガイド。Scope3算定の15カテゴリを網羅し、各カテゴリの算定方法・削減アプローチ・削減貢献量の考え方まで体系化。
具体的な手順・工夫
Step 1: Scope3の位置づけを理解する
- サプライチェーン排出量 = Scope1(直接排出)+ Scope2(購入電力)+ Scope3(その他間接)
- Scope3はGHGプロトコルの15カテゴリに分類される
- 近年は自社のScope 1・2だけでなく、バリューチェーン全体での削減責任が拡大
Step 2: 15カテゴリの分類と優先度設定
| カテゴリ | 主な活動 | 優先度が高い業種 |
|---|---|---|
| Cat.1 購入製品・サービス | 原材料・包装材 | 製造業全般 |
| Cat.4 上流輸送・配送 | 調達物流・出荷物流 | 物流・小売・製造 |
| Cat.11 販売製品の使用 | 消費者の製品使用 | 家電・自動車・設備 |
| Cat.12 販売製品の廃棄 | 廃棄時の処理 | 包装材・消耗品 |
| Cat.15 投資 | 株式・債券・PF | 金融機関 |
Step 3: 算定方法の選択(精度と難易度のトレードオフ)
| 手法 | 精度 | 実装難度 | 推奨場面 |
|---|---|---|---|
| 支出ベース | 低〜中 | 易 | 初年度のベースライン構築 |
| 平均データ法 | 低〜中 | 易 | データ収集困難なカテゴリ |
| ハイブリッド法 | 中〜高 | 中 | 重点カテゴリの精緻化 |
| サプライヤー直接データ | 高 | 難 | Cat.1上位サプライヤー |
Step 4: 削減に向けた優先順位の決め方
- 算定結果から排出量の多いカテゴリ・品目を特定(ホットスポット分析)
- 削減ポテンシャル(技術的・経済的実現性)でフィルタリング
- 自社がコントロールできる度合い(サプライヤー交渉力・製品設計権限)で優先度調整
- 短期実行可能施策(調達先の切替・輸送最適化・包装軽量化)と中長期施策(製品設計変更・サプライヤー能力構築)に分類
削減施策の具体例(カテゴリ別)
- Cat.1(購入製品):材料切替(低排出素材・リサイクル材)・包装材軽量化・サプライヤーへの削減要請
- Cat.4(輸送):輸送モーダルシフト・積載率向上・輸送ルート最適化
- Cat.11(販売製品使用):製品の省エネ改良・使用説明による行動変容・エネルギー効率向上
- Cat.15(投資):ポートフォリオのGHG評価・エンゲージメント
削減貢献量(Avoided Emissions)の参考
- ガイドでは参考項目として削減貢献量の概念も整理
- 自社排出削減(GHGインベントリ)と社会への貢献量(削減貢献量)は別物として管理する
得られた結果
日本企業がScope3を算定できている割合は依然として低水準(約28%・前述Sweepレポート)。一方でCSRD・SBTi・CDPの要求水準は高まり、「算定できない場合の説明義務」が課される時代へ移行。本ガイドは環境省が公式認定する手法書であり、日本のグリーン購入法・算定・報告・公表制度とも整合している。
他社が参考にすべき点
Scope3算定の開始手順:①まず支出ベースで全15カテゴリの概算値を出す(財務データがあれば数週間で可能)→②ホットスポット特定(排出量トップ3カテゴリを確認)→③上位カテゴリのみサプライヤー直接データ収集に切り替える(全サプライヤーに求めない)→④環境省が提供するSCOPE3算定支援ツール(無料)を活用する。製品・サービスの変更権限がある製品開発・調達部門を必ず算定チームに入れること。