研究の概要

炭素税と情報キャンペーン(EV便益に関する情報提供)を組み合わせた政策がEV普及に与える効果を、個人レベルと系統レベルで分析した研究。個人の採用意思決定モデルと電力系統シミュレーションを統合した分析により、両者の政策効果が「個人レベルでは相補的(complementary)だが、系統レベルでは乖離(divergent)する」という反直観的な結果を示した。

炭素税は排出コストを内部化して経済的合理性からEV採用を後押しし、情報提供は心理的バリアを下げる。両者は個人の採用決定を互いに強化し合う。しかし系統レベルで見ると、EV普及の急速な進展が充電ピークの集中を引き起こし、再生可能エネルギーとの統合コストや政策支持を複雑化させることが示された。

主な発見・成果

  • 炭素税と情報提供の組み合わせは個人のEV採用を相乗的に促進する
  • ただし系統レベルでは「EV普及速度の加速→充電需要集中→系統コスト増」という副作用が発生
  • 政策の系統影響を無視した設計は、EV普及が進むほど意図しない負の外部性を拡大させるリスク
  • スマート充電・V2G政策との同時設計の重要性を定量的に示した

実務への応用

EV普及促進政策を設計・評価する立場(エネルギー政策担当者・自動車メーカー・電力会社)にとって、「個人行動モデル×系統モデル」の統合分析が政策評価の必須ツールであることを示す重要な研究。特にZEV規制やEVインセンティブ設計においては、スマート充電インフラとの同時展開を前提条件として組み込むべき。脱炭素への政策投資の費用便益分析に系統影響コストを必ず含めること。