やったこと

朝日新聞SDGs ACTION!が、サプライチェーン排出量(Scope3)の算定・削減方法について、実務担当者向けに5ステップで体系化。インテリア照明器具メーカーを想定した具体的な算定試算事例(カテゴリ1「購入した製品・サービス」)を公開し、「活動量×排出原単位」の計算式の実践例を示した。

具体的な手順・工夫

Scope3の15カテゴリと物流の落とし穴

主要カテゴリの対応表:

  • カテゴリ1:購入した製品・サービス(原材料・部品調達)
  • カテゴリ4:輸送・配送(上流)―自社が荷主で他社委託
  • カテゴリ9:輸送・配送(下流)―販売後の出荷
  • カテゴリ11:販売した製品の使用
  • カテゴリ15:投資(金融機関向け)

算定5ステップ(環境省ガイドライン準拠)

Step1: 算定目的の設定

  • 初期目的:「自社サプライチェーン全体の排出量把握」
  • 中長期目的:「削減対策の経年評価」→ 段階的に目的を拡張する

Step2: 算定対象範囲の確認

  • 単体 vs グループ会社含む
  • 時間的範囲:通勤・出張は当該年度実績、上流・下流は過去〜将来の推計含む

Step3: 各活動のカテゴリ分類

  • 15カテゴリに漏れなく分類する
  • 自社トラックによる輸送はScope1・2であることに注意(Scope3 Cat.4ではない)

Step4: カテゴリごとの排出量算出

基本式:活動量 × 排出原単位

照明メーカー試算例(カテゴリ1):

調達物年間購入金額排出原単位CO2排出量
電球100百万円2.67 t-CO2/百万円267 t-CO2
スタンド素材(プラスチック)200百万円4.00 t-CO2/百万円800 t-CO2

→ 排出原単位は環境省データベースから引用(専門家不要)

Step5: Scope1・2と合算してサプライチェーン排出量を確定

削減の実践4アプローチ

  1. サプライヤーへの働きかけ(省エネ・再エネ転換要請)
  2. 調達・物流の見直し(輸送距離短縮・積載率向上)
  3. オペレーション・製品設計の改善(省エネ設計・軽量化)
  4. 顧客・製品使用者への働きかけ(製品の省エネ化・長寿命化)

得られた結果

  • 環境省「サプライチェーンGHG排出量算定基本ガイドラインVer.2.7」(2025年3月)が公開され、活動量×排出原単位による簡易算定が初期段階でも有効であることが確認されている
  • SSBJ(企業サステナビリティ開示基準)でScope3開示が義務化されるため、今から算定体制を整備した企業は開示コストを大幅に抑制できる
  • 大手上場企業から算定要請を受ける中小サプライヤーも、カテゴリ1相当の算定から着手することで取引条件維持が可能

他社が参考にすべき点

Scope3算定に初めて取り組む担当者の3アクション:①Step1で「何のために算定するか」を決め(SBT認定 / SSBJ開示 / サプライヤー要請への対応)、目的によって必要精度が変わるため先に確定する→②環境省「サプライチェーン排出量算定の考え方」の排出原単位DBを入手して活動量×原単位の試算を開始(費用ゼロ)→③算定の最大の落とし穴は「自社トラック輸送をカテゴリ4に入れる」誤分類なので、Scope1・2との切り分け確認を最初に行う。精度よりもまず全15カテゴリを概算で埋め、ホットスポットを特定することが優先。