やったこと
EUが2024年7月に発効したEcodesign for Sustainable Products Regulation(ESPR)に基づき、デジタル製品パスポート(DPP)の義務化が段階的に始まる。最初の期限は2027年2月のバッテリー規制で、日本企業がEU市場への輸出を継続するためには今すぐ対応準備が必要だ。
具体的な手順・工夫
DPPとは: 製品の原材料調達から製造・物流・使用・廃棄・リサイクルまでの全ライフサイクル情報を電子的に記録した「製品の履歴書」。QRコード・NFC・RFIDを通じて誰でもアクセス可能にする仕組み。
義務化スケジュール:
| 時期 | 対象 |
|---|---|
| 2027年2月 | EV電池・産業用電池(2kWh超)・軽量モビリティ用電池 |
| 2028年頃 | 鉄鋼・アルミニウム |
| 2029年頃 | 繊維・衣料品・靴 |
| 2030年頃 | 家具・タイヤ・マットレス(予定) |
日本企業への影響:
- 非関税障壁: DPP未対応の製品はEU市場に実質的に輸出不可となる
- サプライチェーン遡及義務: 最終製品メーカーだけでなく、部品・原材料サプライヤーにも情報提供義務が及ぶ
- 国内中堅サプライヤーも対象: 大手完成車・電池メーカーの取引先として間接的に対応が必要
3フェーズ実装ロードマップ:
Phase 1 — 現状把握(今すぐ):
- 自社製品がDPP対象カテゴリに該当するか確認
- サプライチェーン全体の情報フロー(調達→製造→物流→使用→廃棄)をマッピング
- 現在のDPP非準拠ギャップを特定
Phase 2 — インフラ構築(〜2026年中):
- 既存のPIM(製品情報管理)・PLM(製品ライフサイクル管理)システムの棚卸し
- サプライヤーからのデータ収集プロセスの設計・テスト
- 情報管理のガバナンス体制整備
Phase 3 — ソリューション活用(2026年下半期〜):
- Catena-Xまたは日本版「ウラノスエコシステム」への参加検討
- カーボンフットプリント算定・トレーサビリティSaaSの導入
- 2027年2月の期限に向けたテスト運用・検証
Catena-Xとウラノスエコシステムの活用: Catena-XはドイツEU主導の産業間データ共有基盤で、自動車・製造業を中心に普及。企業はデータ主権を維持しつつ、標準化された形式でライフサイクルデータを共有できる。日本では経産省主導の「ウラノスエコシステム」がCatena-Xとの相互接続を目指している。
得られた結果
- 2027年2月までにDPP対応が完了しない電池関連製品はEU市場から排除される
- DPP対応により蓄積されたライフサイクルデータは投資家・消費者へのブランド差別化にも活用可能
- サプライヤーへの早期データ収集依頼(2025年度中が理想)が最大のリードタイム短縮策
他社が参考にすべき点
電池・自動車・鉄鋼・繊維・アルミを扱う企業はEU輸出比率に関わらず、サプライチェーン上位企業から遅かれ早かれDPP対応データの提供を求められる。自動車完成車メーカーのサプライヤー(Tier1〜Tier3)は2026年中に取引先のDPP方針を確認し、必要なデータ収集体制を整備すること。
