背景と概要
インパクトデータ企業のUprightが、IPCC気候シナリオに基づく物理的リスクと移行リスクの統合評価機能をプラットフォームに追加した。NASA NEX-GDDP-CMIP6・ISIMIP・WRI Aqueduct Floods等のグローバル気候科学データセットを企業の操業拠点・バリューチェーン情報と紐付け、拠点単位・製品単位でリスクを定量化する。TCFD推奨開示フレームワークおよびISSB(IFRS S2)のシナリオ分析要件に整合しており、アンケート不要でサプライヤースクリーニングが可能な点が特徴。
実装ステップ
- データ連携設定: 自社の生産拠点・物流拠点の座標情報とサプライヤーリストをプラットフォームに登録する
- シナリオ選択: IPCC 1.5℃・2℃・3℃以上の3シナリオを選択し、2026〜2100年の年次リスク推移を取得する
- 物理的リスクマッピング: 洪水・サイクロン・熱ストレス等のハザードを拠点別にスコアリングし、優先対応サイトを特定する
- 移行リスク評価: 自社製品・サービスをUprightの独自タクソノミーで分類し、規制・市場変化による収益影響を定量化する
- 開示資料作成: TCFD戦略・リスク管理・指標目標の各セクションにエクスポートデータを当てはめる
- サプライヤー優先度付け: リスクスコア上位サプライヤーに対してデュアルソーシングまたはキャパシティビルディングを実施する
使うツール・標準
- IPCC第6次評価報告書 シナリオ(SSP1-1.9〜SSP5-8.5)
- TCFD 推奨開示フレームワーク
- ISSB IFRS S2 気候関連開示基準
- WRI Aqueduct / NASA NEX-GDDP-CMIP6
成功のポイント
- 拠点座標データの精度が評価精度を直接左右するため、GISデータ整備を先行する
- 物理リスクと移行リスクを別々のツールで管理せず、統合ビューで経営層への説明資料を1本化する
日本企業への適用
有価証券報告書のサステナビリティ情報開示(金融庁2023年改正)やSSBJ基準対応において、シナリオ分析の定量化が求められている。Uprightのようなデータ駆動型ツールは、自前でシナリオ分析を構築するコストを大幅に削減できる。まずTCFD開示に必要な「重要なリスク上位3拠点」の特定から試験的に導入することを推奨する。
