やったこと
ブライトイノベーションが2026年6月16日に公開した実践ガイドでは、Scope 3算定後に「サプライヤーをどう動かすか」で壁にぶつかる企業向けに、サプライヤーエンゲージメントを中心軸に据えた削減ロードマップを整理した。CDPの2024年レポートが示す「サプライチェーン排出量は自社排出の平均26倍」という数値が前提になっている。
具体的な手順・工夫
ロードマップ3ステップ
- ゴール設定:SBTi目標(例:2030年までにScope 3全体で〇%削減)を定め、大排出カテゴリを特定する。SBTiの「エンゲージメントターゲット」に基づき、自社目標と連動したサプライヤー側の削減ターゲットも設定する。
- 重点領域の特定:カテゴリ別排出量と自社のサプライヤーへの影響力(仕様変更可否・取引関係の強さ)を整理し、「排出量大かつ自社の働きかけで削減しやすい領域」から優先着手する。
- 施策ポートフォリオと計画:「活動量を減らす」「排出原単位を下げる」「1次データ活用で算定精度を上げる」の3軸で施策候補を整理し、3〜5年のロードマップとして可視化する。
社内体制構築のポイント
環境省モデル事業の事例では、調達部門が取引先窓口を担い、環境部門がGHG算定を主導する役割分担を経営層トップダウンで推進した企業が取り組みを加速した。調達・開発・環境の横断チーム体制が実践的に機能している。
サプライヤーエンゲージメントの進め方
- 対象の優先順位付け:排出規模・自社への依存度・技術変更余地で段階分け
- 支援策の設計:データ収集テンプレート提供、算定ツール共有、排出削減ノウハウのトレーニング
- Win-Win設計:自社の削減実績とサプライヤーの削減実績を共同でPRできる関係を構築する
得られた結果
- Scope 3排出量の大部分(サプライチェーン平均26倍)を占める領域に直接介入できるパイプラインが構築される
- サプライヤーの削減行動が自社Scope 3に反映される1次データ体制に移行できる
- 投資家・CDP・SBTiへの説明責任を果たしつつ、調達リスク低減・コスト構造見直しという事業機会も得られる
他社が参考にすべき点
製造・食品・化学など調達規模の大きい中堅〜大企業向けの3つのポイント:
- Scope 3削減の主戦場はサプライヤーエンゲージメント——自社オペレーション改善だけでは「26倍の排出源」に手が届かない。調達部門と環境部門の役割分担を先に設計する。
- エンゲージメントターゲットを自社目標と一体設計——SBTiの要件を逆手に取り、サプライヤーへの削減要求を「お願い」から「数値コミットメント付きの協業」に格上げできる。
- 3軸施策ポートフォリオで計画の空白を防ぐ——活動量削減・原単位改善・算定精度向上の3軸で網羅的に施策を洗い出すと、「どのサプライヤーに何を求めるか」が明確になる。