研究の概要

太陽光発電の普及が進む配電系統において、蓄電池(BESS)がどれほどの経済価値を持ち、どの市場設計のもとで最大効果を発揮するかを定量的に分析した論文です。米国IEEE 123ノード系統をテストベッドに、フラット料金・リアルタイム価格・ローカル電力市場(LEM)の3種類の市場設計を比較しました。

太陽光発電量の不確実性はOrnstein-Uhlenbeck過程でモデル化し、Rolling-Horizon最適潮流計算を繰り返すことで各シナリオの顧客コストと系統コストを評価しています。太陽光普及率と蓄電池普及率を独立変数として系統的にスイープした点が本研究の特徴です。

主な発見・成果

  • ローカル電力市場(LEM)が最優秀: 顧客コスト・系統コストともにLEMが最低。リアルタイム価格(RTP)は最悪の結果となり、直感に反する重要な知見です
  • 蓄電池の価値は二面性を持つ: 太陽光普及率が上がると蓄電池1台あたりの「限界価値」は低下するが、「蓄電エネルギー単位あたりの価値」は上昇する
  • 設置場所が重要: 誤った場所に設置した蓄電池は系統混雑を悪化させる。再生可能電源や負荷との共設置が効果的

実務への応用

GX実務担当者にとっての示唆は明確です。①蓄電池投資の経済性評価には適用される市場設計・料金メニューの前提を必ず明示する ②REITや自社電源として蓄電池を導入する際は「どこに設置するか」が収益を大きく左右する ③ローカル電力市場(コミュニティエネルギー取引)の導入が再エネ+蓄電池システムの費用対効果を最大化する可能性がある