研究の概要

タンデム太陽電池は複数の光吸収層を積層することで、単一材料では達成できない高い変換効率を狙う技術だ。本研究は、ペロブスカイトとCu(In,Ga)Se₂(CIGS)を組み合わせたタンデム構造において、2箇所の接合界面(層と層の境界面)に存在する光学的・電気的損失を工学的に解消する手法を開発した。

ペロブスカイト/CIGSタンデム太陽電池が抱える課題は「インターフェースでのキャリア(電子・正孔)輸送ロス」にある。光が電気に変換されても、層間の接合がうまくいかなければ効率は伸びない。Zeng, Wang, Tangら(中国・英国共同研究グループ)は2つのインターフェースをそれぞれ最適化することでこの損失を同時に低減し、第三者機関から認証済みの変換効率30.57%を達成した。

主な発見・成果

  • **認証変換効率30.57%**を達成(第三者機関による公式認証)。ペロブスカイト/CIGSタンデム型として世界トップクラスの水準
  • 2つの接合界面への工学的介入(界面修飾・材料選定)により、キャリア輸送効率と光吸収効率を同時改善
  • デバイス安定性も向上。変換効率だけでなく長期信頼性も実用化要件として満たす方向に前進
  • CIGSは既存の薄膜太陽電池として工場生産実績があり、ペロブスカイトとの組み合わせは製造コスト面でもシリコンタンデムとは異なるアドバンテージを持つ

実務への応用

GX実務担当者にとって、この研究成果が意味することは再エネ調達コストの中期予測を更新する根拠になる点だ。

  • RE100・再エネ調達計画の見直し材料:商業普及品のシリコン太陽電池は現在20〜24%の変換効率。30%超のタンデム型が量産段階に入れば、同一面積・同一設置工事費でより多くの発電量が得られる。屋根置き太陽光のROI計算や、PPA価格交渉の前提となる「将来パネル単価・発電量」の推定に反映すべきシグナルとなる
  • 設備投資タイミング戦略:高効率パネルの量産タイムラインを把握することで、今すぐ設置すべきか・数年待つべきかの投資判断が精緻化できる。学習曲線コスト低減の速度と自社の再エネ目標達成期限のバランスを取る材料として使える
  • 脱炭素ロードマップへの組み込み:2030年以降の電源ポートフォリオ検討時に「高効率タンデム型」を選択肢として明示的に位置づけることが実務上の準備として有効。特に土地制約が大きい都市部や工場屋根への設置を想定する場合、変換効率の向上は直接的なスペース問題の解決に繋がる