実装ステップ
炭素回収・貯留(CCS)は2026年2月時点で世界75プロジェクトが稼働し、年間6,250万トンのCO2を回収しているが、これは化石燃料起源の年間排出量381億トンの0.2%未満にとどまる。IEAの1.5℃シナリオでは2035年までに17億トン/年の回収が必要——現在の約30倍という巨大なスケールアップが求められている。
CCSの3ステップ実装プロセス
Step 1:CO2回収 製造施設・発電所の排気流から化学溶剤を使いCO2を分離する。目標捕集率は90〜95%だが、IEEFAの分析では実際の多くのプロジェクトが大幅に下回っており、製鉄所では17%、水素製造では80%程度にとどまる。
Step 2:圧縮・輸送 捕集したCO2を液化状態に圧縮し、パイプラインまたは車両で貯留サイトへ輸送する。この過程で施設のエネルギー消費量が「大幅に増加」するため、電力コストが重要な経済変数となる。
Step 3:地中貯留 枯渇油田・塩水帯水層への永久注入。英国では地理的クラスター(東海岸、HyNet、Acorn、Viking)を形成して複数施設が共用インフラを活用するモデルを採用。
使うツール・標準
| 技術 | 用途 | 現状 |
|---|---|---|
| 点源CCS | セメント・化学・ガス処理の排気から回収 | 商業稼働75件 |
| BECCS | バイオマス発電+CCS(ネガティブエミッション) | 限定的稼働 |
| DACCS | 大気中からの直接回収 | コスト高・発展途上 |
| ブルー水素 | 天然ガス改質+CCS | 英国・カナダで実証中 |
コストデータ
- 英国政府の5プロジェクト向け支援:25年間で最大217億ポンド(約75%は消費者負担)
- Oxford大学分析(2023年):「低CCSシナリオ」は「高CCSシナリオ」より年間約1兆ドル安い
- 現状:CCSのコスト低減曲線はほぼ確認されていない(再エネと対照的)
成功のポイント
- 用途を絞る:IEAも認める通り、CCSが最も理にかなうのは代替技術がないハードアベイト分野——セメント・石灰・化学・一部の鉄鋼プロセス。石炭・ガス発電所へのCCS適用は経済的に困難。
- 捕集率の現実的評価:90〜95%の捕集率を達成しているプロジェクトは少数。調達・投資検討時は実際の捕集率データを第三者検証で確認する。
- ライフサイクル排出評価:ガスベースCCSは上流メタン漏洩が補足CO2の便益を相殺するリスクがある。ライフサイクルアセスメント(LCA)が不可欠。
- クラスター参加を検討:個別プロジェクトよりも地域クラスター(共用パイプライン・貯留)への参加が経済的に有利なケースが多い。
日本企業への適用
日本ではセメント(住友大阪セメント・太平洋セメント)、鉄鋼(日本製鉄)がCCS実証に取り組んでいる。CCUS(CO2利用+貯留)の観点では、CO2を原料に化学品・合成燃料を製造するCarbon Utilizationが日本の得意分野として注目されている。国の「CCS事業法」(2024年成立)により貯留地点の事前調査・許可制度が整備された。国内貯留適地(苫小牧・日本海沖)の開発状況と国際貯留(マレーシア・豪州等)のコスト比較を踏まえた戦略選択が重要。