やったこと
アスエネが2026年3月に公開した「Scope3のサプライヤー対応、何から始めればいい?実務で使える進め方を解説」で、全サプライヤーを同時対象にせず優先順位をつけて段階的に対応範囲を広げる実務手順を体系化した。GHGプロトコル・CDPサプライチェーンプログラム・SBTiの要件を整理した上で、規制圧力を活用した対話促進の具体的手法を解説した。
具体的な手順・工夫
なぜ今サプライヤー対応が「任意」から「必須」に変わったか
- CDPサプライチェーンプログラム:2023年度時点で世界740社以上のバイヤー企業がサプライヤーへ回答要請
- SBTi要件:参加企業は主要サプライヤーの67%(購買金額ベース)にSBTi準拠目標の設定を必須化
- CBAM(欧州炭素国境調整):2026年本格施行→鉄鋼・化学・セメントの上流排出量管理が事実上必須
ステップ1:優先サプライヤーの特定(3つの観点)
①購買金額の大きさ(スペンドベース推計):
- 調達金額×業種別排出原単位(環境省GHGガイドラインver.2.4収録DBを参照)で概算排出量を試算
- 全サプライヤーの上位20〜30%の購買金額が排出量の70〜80%を占めるパレート構造が多い
②排出集約度の高い業種:
- 鉄鋼・化学・セメント・紙パルプ→購買金額が同規模でも他業種より排出量が多い
- 業種コードと排出原単位DBをクロス参照して高インパクト群を特定
③削減ポテンシャルと代替可能性:
- 再生可能エネルギーへの転換余地が大きく、低炭素素材への切り替えが現実的なサプライヤーを優先
ステップ2:排出量データ収集の方法論移行
- フェーズ1:スペンドベース法(購買金額×業種別原単位)で全体像を把握→実装が最速
- フェーズ2:高インパクト上位サプライヤーから順次、一次データ(サプライヤー固有の実測値)へ移行
- 収集ツール:CDPサプライチェーンプログラム参加 / 独自アンケート / ESGデータプラットフォーム
- 回答率を高めるには「フォーマットのシンプル化」と「回答支援ツールの無償提供」が効果的
ステップ3:規制圧力を活用した対話促進
- 「御社の取引先(バイヤー)がSBTiに参加している」という事実を共有することで、サプライヤー側の緊急感が高まる
- CBAM対象業種のサプライヤーには欧州向け輸出への直接影響を提示すると協力率が上がる
得られた結果
先行企業では、スペンドベース法での全体把握から高インパクト上位サプライヤー50社への重点対話・一次データ移行を1〜2年かけて実施し、カテゴリ1排出量の測定精度が大幅向上。SBTi参加バイヤーからの評価が改善し、取引継続の優位性が確保された。
他社が参考にすべき点
- まず環境省GHGガイドラインの排出原単位DBを使ったスペンドベース推計で「どのサプライヤーがインパクト大か」を可視化する(1〜2週間で完了)
- CDP・SBTi・CBAMの規制情報をサプライヤーへの最初の対話で共有することで、「義務だから対応する」という動機付けが最速
- 全サプライヤーへ同時要請は回答率低下を招く→上位20〜30サプライヤーへの集中対話から始める
- 回答フォーマットは「サプライヤー側が入力しやすいシンプルな様式」に設計する(複雑すぎると回答率が半分以下になる)
