やったこと

greenoteが2026年6月に公開した「Scope3とは|15カテゴリと算定方法・SSBJ開示との関係を解説」で、Scope3算定の全体像を実務目線で整理した。多くの企業でScope3は排出量全体の7〜9割を占めるにもかかわらず算定が複雑なため、ステップ別に進め方を解説した。

具体的な手順・工夫

Scope3の15カテゴリ(上流8・下流7)

  • 上流(調達・製造側):購入した製品・サービス、資本財、燃料・エネルギー関連活動、輸送・配送(上流)、廃棄物、出張、従業員の通勤、リース資産(上流)
  • 下流(顧客・製品ライフサイクル側):輸送・配送(下流)、販売した製品の加工、使用、廃棄処理、フランチャイズ、投資

算定の基本構造

  • 活動量 × 排出原単位 = 排出量
  • 一次データ(サプライヤー実測値)と二次データ(業種平均・支出ベース係数)を組み合わせる

実務的な進め方(ホットスポット特定→精度向上)

  1. 支出ベース法で全カテゴリの概算を出し、排出インパクトの大きいカテゴリを特定(全体把握フェーズ・数週間)
  2. 上位カテゴリのサプライヤーに一次データ収集を依頼(エンゲージメントフェーズ)
  3. 段階的に一次データ割合を増やし、精度を年次で向上させる

SSBJ(ISSB基準)でのScope3開示要求

  • SSBJ基準(日本版ISSB)では重要なScope3カテゴリの開示が求められる
  • 投資家・CDPからも要請が増加しており、開示なしは投資判断に影響
  • 精度より「始めること」が優先されるため、二次データ100%でも開示価値あり

サプライチェーン協働の設計

  • 単独算定の限界があるため、上位サプライヤーとデータ共有スキームを構築
  • 教育リソースと簡易フォーマットを提供することでサプライヤー回答率を向上させる

得られた結果

段階的なアプローチ(支出ベース→ホットスポット特定→一次データ移行)を採ることで、初年度は数週間でScope3の全体像を把握でき、2〜3年で精度が大幅に向上する。開示の一貫性と進捗の証明が企業価値向上につながる。

他社が参考にすべき点

  • まず支出ベース法で全15カテゴリの概算を出し、自社にとって重要なカテゴリを特定することが最初のステップ
  • SSBJ対応は「重要なカテゴリのみ」で始めてよい——全カテゴリ一次データを待つより先に開示することが投資家から評価される
  • 精度向上中は「データが増えると一見排出量が増える」ため、社内や投資家への事前コミュニケーションが重要
  • 業種によりカテゴリ重要度が異なる(製造業はCat.1購入製品、小売はCat.11製品使用が大きい)ため自社業種のベンチマークを確認してから優先順位を設定する