実装のポイント

バイオメタノールの製造には「木材のガス化」と「ガスのメタノール合成」という2つの工程が必要で、それぞれ異なる専門技術と設備を要する。王子ホールディングスが主導する今回の実証では、この2工程を複数企業が役割分担することで、1社では保有しにくい技術と設備を組み合わせている。廃棄・低価値扱いされがちな国産木材・古紙を化学品原料に転換しながら、商業スケールでの経済性を検証するのが最大の目的だ。

具体的な手順

  1. 原料調達(王子HD): 製紙業を本業とする王子HDが、自社工場の端材・残材などの木質バイオマスや古紙といった循環資源を調達・供給する。廃棄・低価値バイオマスを活用することで原料コストを抑制する。

  2. 木材ガス化(住友重機械工業・愛媛県新居浜工場): 住友重機が保有する木材ガス化技術を使い、木材や古紙を高温で熱分解・部分酸化し、合成ガス(CO + H₂)に変換する。実証設備は愛媛県の住友重機械新居浜工場に設置され、既存の重機械製造インフラを活用する。

  3. メタノール合成(王子HD × 東洋エンジニアリング): 生成した合成ガスを、東洋エンジニアリングが持つメタノール合成触媒技術を用いてメタノールへ転換する。化石燃料由来の合成ガスではなく生物由来のバイオマスを原料とすることで、ライフサイクル全体でカーボンニュートラルなメタノールを製造できる。

  4. 品質・経済性の検証: 製造したバイオメタノールの品質規格適合性と製造コストを評価し、燃料・化学品として出荷可能なグレードかどうかを確認する。2026〜2029年の実証期間を通じて商業スケールに向けたコスト目線を明らかにする。

得られた結果

実証事業は環境省「脱炭素型循環経済システム構築促進事業」に採択され、2026年度〜2027年度の補助が確定している。事業期間は2026年度〜2029年度の4年間。製造規模やコスト目標の具体的数値は現時点では非公表だが、製紙大手の廃材ネットワーク(王子HD)・ガス化設備(住友重機)・化学合成技術(東洋エンジニアリング)という3社分業モデルは、新規参入事業者がバイオメタノール生産に取り組む際の実装パターンとして参照価値が高い。