やったこと

WBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)が運営するNet Zero Guidebookでは、業種の異なる3社のネットゼロ目標設定における実務事例を公開している。いずれも「目標の野心度だけでなく実現可能性を担保する分析プロセス」に焦点を当てている。

具体的な手順・工夫

事例1:製薬会社 — ベンチマーキングによる目標競争力の確認

  • 課題:2050年カーボンニュートラル宣言はあるが達成計画が未整備
  • 手順:①32の定量・定性指標を設計、②競合他社43社を分析(TCFD等)、③4段階の成熟度スケールで自社位置を特定
  • 結果:調達Scope3は業界先頭水準と判明、一方でGHGベースラインデータの整備が不足と特定し優先課題化

事例2:商用車OEM — Scope3上流排出量のインパクト・影響力マッピング

  • 課題:上流Scope3の排出目標を策定し、ネットゼロ商用車の市場投入に向けた具体的経路を明確化したい
  • 手順:①GHGプロトコル15分類を軸に部品レベルのデータリクエストを設計、②コンポーネント別に排出量を帰属→バッテリー調達が上流排出の50%超と特定、③サプライヤー市場の分散度を定量分析し「影響力行使が可能か」を評価
  • 教訓:当初のインタビューでは影響力「低」と判断→サプライヤー市場の定量データを持ち込み再インタビューして「影響力あり」に評価を更新できた

事例3:化学品メーカー — 脱炭素レバーの優先順位付け

  • 課題:強度ベースの近距離目標設定に向けてScope3の削減分析を実施
  • 手順:特定事業部門で12のレバーを特定し削減ポテンシャル・コスト・実現可能性で優先順位付け
  • 結果:2030年までに約50%削減可能な経路を発見

得られた結果

  • 製薬:ベースラインデータ整備が最優先課題として特定され行動計画に落とし込み可能に
  • 自動車OEM:バッテリー調達の戦略的交渉・サプライヤー切り替えが最有力削減レバーと特定
  • 化学品:特定部門で2030年50%削減の具体的経路を発見

他社が参考にすべき点

Scope3目標設定で「どこに影響力があるか」を確認する際、社内インタビューだけでなく公開データによるサプライヤー市場分析を組み合わせると影響力評価が覆るケースがある(OEM事例の教訓)。製薬事例の「32指標×43社ベンチマーク」の設計・実施手順は他業種にも転用可能。