やったこと
2026年の日比谷音楽祭(チケット無料・3世代対応の野外音楽フェスティバル)が、アスエネを環境パートナーに迎え、イベント全体のCO2排出量をScope1(直接排出)からScope3(来場者の移動・飲食等の間接排出)まで算定・開示する取り組みを実施した。国内の大規模音楽フェスティバルが三スコープ全てを算定・公開したケースは珍しく、イベント×脱炭素の実装事例として注目される。
具体的な手順・工夫
算定スコープの設定
- Scope1:会場内で使用した発電機・車両等の直接燃焼
- Scope2:会場施設の電力消費(東京電力の排出係数使用)
- Scope3:来場者の交通移動、飲食ブースの食材調達、スタッフの出張等
来場者移動データの収集 Scope3の最大排出源は来場者の交通手段。スタッフによる入場口での移動手段サンプリング調査で、電車・自転車・徒歩・自動車の比率を推計した。
来場者数変動への対応 事前算定は来場者数を前年比で推計するが、当年は天候好転により14万5,000人(前年)から22万3,000人に増加した。単純な総排出量では年度比較ができないため、「参加者1人あたりCO2排出量(kg-CO2/人)」を共通指標として採用し、規模変動を吸収した。
企業との共創施策
- サントリー:ノンアルコール飲料「オールフリー」の提供を通じ「フリーでボーダーレス」の理念に参画
- トヨタ自動車:水素発電車両と蓄電池でフード出店エリアにグリーン電力を供給する実証実験を実施
- ハイブリッド配信:遠方来場者に対してオンライン参加オプションを提供し、長距離移動由来のScope3を削減
廃棄物削減 使用済みペットボトルの100%リサイクルを目標設定し、回収スタッフを各フードゾーンに配置した。
得られた結果
- 「参加者1人あたり排出量」という指標を定義したことで、来場者数が55%増加した年でも環境効率の改善を客観的に評価できる枠組みが整った
- トヨタの水素発電を活用したゾーンではグリッド電力ゼロを実現
- CO2算定結果とレポートをフェスティバル公式サイトで開示し、来場者への環境意識醸成ツールとして活用
他社が参考にすべき点
- 来場者数・参加者数が変動する業態(フェス・展示会・スポーツイベント等)では、総排出量ではなく「1人あたり排出量」を管理指標にすることで年度比較が可能になる
- Scope3算定で最も工数がかかる「来場者移動」は、入場時のサンプリング調査(100名程度)で統計的に推計できる
- 協賛企業を単なるスポンサーではなく「脱炭素施策の共同実施者」として位置づけることで、スポンサー価値と環境価値を同時に訴求できる(中小規模のイベント主催者にも転用可能な設計)
