研究の概要

企業のサプライチェーン設計において「コスト最小化」と「CO2排出削減」はしばしばトレードオフの関係にある。本研究は「多目的エンタープライズ・グリーンサプライチェーン・ネットワーク設計(MOEDGSCND)」問題として、コスト最小化・CO2排出削減・顧客不満足度低減の3目標を同時に最適化する数理計画手法を提案し、どの流通センターを開設してどの顧客ゾーンに割り当てるかを決定する実用的フレームワークを構築した。

主な発見・成果

研究では3種類の解法を比較した。完全整数線形計画(PuLP使用)によるパレート最適解の正確な導出、3種類の完全多項式時間近似スキーム(FPTAS、(.94+ε)保証)、そしてベースラインヒューリスティックだ。8顧客・5候補流通センターのテスト事例での検証により、完全解法が最適パレートフロントを特定する一方、FPTAS変種はミリ秒単位で完了し大規模問題への実用性を示した。財務・環境・サービスの3目標を統合した意思決定ツールの技術的実行可能性が実証された。

実務への応用

製造業・流通業のサプライチェーン担当者がScope 3排出量削減計画を立案する際に直接活用できる手法だ。流通拠点の選定・統廃合・顧客割当変更を検討する際に、CO2削減効果とコスト増加のトレードオフを定量的に可視化できる。特に脱炭素目標達成に向けて物流ネットワーク再編を検討している企業にとって、環境KPIと財務KPIを同時に評価する意思決定基盤として価値がある。SBT(科学的根拠に基づく削減目標)設定とロードマップ作成への応用も有望だ。