研究の概要
水素をエネルギーキャリアとして輸送するパイプラインへの関心が高まっているが、既存のコスト推計は「均一な迂回係数」を使う単純化アプローチが主流で、地域特性を無視した過大・過小評価が生じていた。本研究はGIS(地理情報システム)ベースのモデルを構築し、地理的要因(土地利用、地形、既存インフラ)と政治経済的要因(国別加重平均資本コスト:WACC)を組み合わせて、より実態に即したコスト推計手法を提案した。
4,900の潜在的グローバルパイプラインルートについて、地域別の輸送均等化コスト(LCOT)を算出した。
主な発見・成果
- コスト格差は最大3倍:地域特性を考慮すると、同じ距離のパイプラインでも輸送コストが最大3倍異なる
- 従来手法との乖離:既存の欧州エネルギーシステム分析フレームワークに本手法を適用すると、貿易フローの予測結果が大幅に変化
- WACC効果:国別の資本コスト差(先進国 vs 新興国)がパイプラインLCOTに与える影響が大きく、単純な距離×均一係数モデルでは再現不能
- データ公開:4,900ルートのコスト・経路データを公開
実務への応用
日本向けの海外グリーン水素・アンモニア調達コスト評価において、輸出国内のパイプライン輸送コストを正確に見積もることが重要。特に中東・北アフリカ(MENA)地域からの水素サプライチェーン評価では、地形・既存インフラ・現地WACCを考慮したGISベースのコスト分析が不可欠。
