やったこと

英製薬大手GlaxoSmithKline(GSK)は2026年9月、自然由来カーボンクレジット事業のEarthlyを通じて、インドのVarahaが展開する再生農業プロジェクトと8年間の「排出削減購入契約(ERPA)」を締結した。インド北部パンジャブ州・ハリヤナ州で小規模農家5万ヘクタールを対象に、2028〜2033年に年間約10万トンのカーボン除去クレジットを調達する。

具体的な手順・工夫

農業手法の転換(3つの改革):

  1. 農作物残渣の焼却廃止→土壌すき込みへ: 収穫後の農業残渣を焼却する従来慣行をやめ、残渣を土壌にすき込む。土壌有機炭素を増加させながらPM2.5排出を削減(4万2,000ヘクタールで4,574トンのPM2.5排出回避を実績として確認)。
  2. 湛水稲作→直播栽培(DSR)へ: 水田に苗を移植する湛水方式から、直接播種する乾田栽培(DSR)に転換。水使用量を大幅削減(595億リットルの節水を実績確認)。
  3. 集約的耕起の削減: 耕起回数を減らして土壌撹乱を最小化し、土壌炭素の保持を促進。

クレジット認証スキーム:

  • Verra認証の農地管理方法論「VM0042」を適用し、MRV(計測・報告・検証)の信頼性を確保。
  • 第三者機関による検証で第1回モニタリング期間の実績を確認済み。
  • Earthlyが仲介役としてGSK・Varahaの間のERPA組成と長期的なクレジット供給管理を担う。

GSK側の活用方針:

  • 残余排出量の約7%をこのクレジットでカバーする計画。
  • 2030年に最初のクレジットを償却予定で、長期的なScope3削減ロードマップに組み込み。

得られた結果

  • 農家世帯収入:平均12〜16%増加(水・肥料コスト削減の複合効果)
  • PM2.5排出:4万2,000ヘクタールで4,574トン回避
  • 節水量:595億リットル(灌漑コスト削減に直結)
  • クレジット量:年間約10万トンCO₂相当(2028〜2033年)

他社が参考にすべき点

Scope3(サプライチェーン)削減に取り組む食品・医薬品・消費財メーカーは、農業サプライヤーの慣行転換とカーボンクレジット購入を一体設計するERPAモデルが有効。Verra VM0042認証を活用すれば国際的に認められた方法論で削減量を定量化でき、SBTiへの貢献として申告可能。農家収入の向上という社会的共便益(コベネフィット)も契約設計に組み込めると、ステークホルダーへの説明力が上がる。