研究の概要
住宅用蓄電池の運用最適化において、ニューラルネットワークベースの予測制御と数学的安全保証を組み合わせた「安全再帰ホライズン混合整数微分予測制御(MIPC)」手法を開発した。従来の混合整数最適化(MIP)は計算時間が長く実時間制御に不向きだが、ニューラルネットワークは安全性保証が難しいという問題があった。本研究はその両方の欠点を克服し、電池残量・時刻情報を入力として毎ステップ動的にスケジュールを更新する閉ループ制御を実現した。バッテリー劣化の物理モデル(サイクルカウンティング)を微分可能な形でニューラルネットワークに組み込み、運用コストと劣化コストを統合最適化する点が独創的である。
主な発見・成果
- ベンチマーク(混合整数MPC)と比較してコスト差わずか6.9%を達成しながら計算速度は25倍高速(0.11秒 vs 2.7秒/ステップ)
- 予測誤差0〜30%の全範囲で後悔量(regret)増加は4%未満と高い堅牢性を確認
- 再帰的実現可能性(recursive feasibility)の数学的保証をニューラルネットワーク制御に組み込む手法を確立
- 微分可能な劣化レイヤーにより実際のバッテリー摩耗物理に基づいた訓練が可能
- IEEE CDC 2026(第65回決定・制御会議)採択論文
実務への応用
VPP(仮想発電所)やBEMS(ビル・エネルギー管理システム)の運用自動化に直接応用可能。計算負荷が小さいためエッジコンピュータでの実装が現実的になり、家庭用蓄電システムや産業用ESS(エネルギー貯蔵システム)への搭載コストも下がる。電池劣化コストを明示的に最適化に組み込む設計は、蓄電池事業の収益計算やESGレポートにおける電池寿命管理の議論にも活用できる。再エネ+蓄電池セットの事業性評価ツール開発や、デマンドレスポンス(DR)プログラム参加時の最適制御にも直接役立つ。
