概要
自発的カーボン市場の信頼性確保機関ICVCM(Integrity Council for the Voluntary Carbon Market)が、VerraのVM0049方法論を承認した。この方法論は、CO2を捕捉して地質学的に永久貯留するプロジェクトに対するGHG削減量・除去量の計測手続きを定めたものだ。DAC(直接空気回収)、BECCS(バイオエネルギー+CCS)、地中貯留、CO2輸送をモジュール構造でカバーする。
実装ステップ
1. 対象技術モジュールを選定する
VM0049はモジュール構造を採用しており、以下から組み合わせる:
- M1:直接空気回収(DAC)
- M2:CO2輸送パイプライン
- M3:地質学的CO2貯留
- M4:バイオエネルギー+CCS(BECCS)
プロジェクトの技術構成に合わせてモジュールを選択し、拡張時も後から追加可能。
2. 電力供給の要件を確認する
ICVCMの要求事項で最も重要な制約:CCSプロジェクトに使用する再生可能電力は、「既存の再エネ発電」ではなくプロジェクト専用に新設された再エネ設備から供給しなければならない。既存グリッドの再エネを充当しても要件を満たさない点に注意。
3. 計測・モニタリング体制を構築する
Verraの登録ポータルでプロジェクト設計文書(PDD)を提出。貯留量の永続性モニタリングと第三者検証(DOE:指定運用機関)のスケジュールを計画に組み込む。
4. クレジット発行・登録の手続きを進める
VM0049は2024年6月から有効で、地質学的貯留を含む世界中のプロジェクトに適用可能。ICVCMの「コアカーボン原則(CCP)」ラベルを取得することで、高品質クレジットとして市場での流通が可能になる。
5. CORSIA等の規制コンプライアンスとの整合を確認する
VM0049由来のクレジットがICAO・CORSIAの適格ユニット要件を満たすかを国際民間航空機関のガイダンスで確認する。
使うツール・標準
- Verra VCS(Verified Carbon Standard):登録・検証プラットフォーム
- ICVCM コアカーボン原則(CCP):高品質クレジットの認定基準
- ISO 14064-2:プロジェクトレベルのGHG算定・検証
- 地質学的貯留モニタリング基準(EU GeoCapacity、DOE NETL等)
成功のポイント
- モジュール設計を活用し、小規模パイロットから始めて段階的にスケールアップする
- 「新設専用再エネ」要件は電力調達計画の段階で明確にしておく
- 技術的難易度が高いため、第三者DOEの早期選定が承認スケジュールの鍵
- 共有インフラ(パイプライン等)の活用でプロジェクトコストを抑制できる
日本企業への適用
日本では2050年ネットゼロに向けてCCUS技術の社会実装が国家戦略の柱となっている。VM0049の承認により、CCS・DACプロジェクトから創出されたクレジットが国際的な信頼性を持って市場流通できるようになった。石化・製鉄・セメント等の日本の産業脱炭素プロジェクトにとって、国際カーボン市場へのアクセス手段として活用を検討する価値が高い。特に「新設再エネ要件」は日本の電力システムへの実装で課題になる可能性があり、早期に設計段階で対応策を検討すべきである。
