研究の概要

再生可能エネルギー事業者やデータセンターが「非確定連系(non-firm interconnection)」——系統混雑時に出力制御(curtailment)を受け入れる代わりに連系を早く取得できる仕組み——を選択するケースが増えている。従来は出力制御が発生した場合、連系容量に比例した「プロラータ(一律按分)」で全者が均等に削減される方式が一般的だった。

本研究は、この出力制御義務を当事者間で売買できる「出力制御クレジット市場(CCM: Curtailment Credit Market)」を設計し、プロラータ比で1.41〜1.83倍の社会的厚生向上を実証した。価値の損失が100倍以上異なる需要家(病院とデータセンター等)が混在する系統に、適切な価格シグナルを与える仕組み。

主な発見・成果

  • プロラータの問題: 出力制御の経済的損失(Value of Lost Load)は需要家カテゴリーによって100倍以上の差があるにもかかわらず、一律按分では高損失需要家への偏りが解消されない
  • CCMの設計: ネットワーク制約(DC潮流モデル)の下で出力制御義務を売買可能にする。VCG(Vickrey-Clarke-Groves)支払いメカニズムを用いて参加者の正直申告を誘導
  • 厚生改善効果: 真実申告ケースでは社会計画者解(全知解)と同等の厚生を達成。プロラータ比で1.41〜1.83倍の改善をランダム化シナリオの86%以上で確認
  • 市場の安全性: 参加者は出力制御なし状態と比較して必ず同等以上の厚生を得られる設計(個人合理性保証)
  • Applied Energy誌に採択済みの査読論文(2027年号)

実務への応用

  • 日本でも再エネ出力制御が増加する中、出力制御の権利(免除権・義務転売)を市場化する制度設計の先行事例として直接参照できる
  • データセンターや大口工場が非確定連系を選択する際の経済分析ツールとして活用可能——自社の「価値の損失」を正確に定量化し入札戦略を設計する
  • 電力系統の混雑管理を従来の出力制御指示から市場メカニズムへ移行させる制度改革に向けた学術的根拠
  • VGCメカニズムはスマートコントラクトへの実装に適しており、自動執行型の出力制御市場の技術的実現可能性も高い