やったこと
商船三井は自社の国際航路を走る貨物船を「海洋マイクロプラスチック回収・観測プラットフォーム」として活用する取り組みを実装した。2019年の社員提案(社内「経営塾」制度)を起点に、三浦工業との共同開発、大学・行政との連携データ活用まで体系化している。
具体的な手順・工夫
第一世代装置(2019〜2022年)
- 仕組み: 船がバラスト水(入港時の安定化用海水)を取り込む際にマイクロプラスチックを採取
- 実証場所: 国内複数港・5隻で試験実施
- 開発パートナー: 三浦工業(東京・ボイラーメーカー)—既存商業取引先との共同開発でコスト・時間を圧縮
第二世代装置(2022年〜)
- 改良点: バラスト水系統→エンジン冷却水の連続取水系統へ変更(常時稼働・航路を問わず採取可能)
- 処理水量: 第一世代比約70倍の年間処理水量を達成
- 運用形態: 可変航路のバルクキャリア1隻に搭載して商業運航と同時並行で稼働
データ収集・社会還元の仕組み
- 回収したマイクロプラスチックは九州大学研究チームが分析
- 分析データを環境省の海洋マイクロプラスチック分布データベース「AOMI(Atlas of Ocean Microplastics)」へ提供
- データ蓄積により海洋汚染の地図化(見える化)が進み、政策立案・研究利用の公共財的な価値を創出
得られた結果
- 第二世代装置で処理水量が大幅増加し、より広い海域・航路からのデータ収集が実現
- 航行コストの増加なしに環境貢献を実装(既存インフラ流用の効果)
- AOIMデータベースへの貢献で、企業としての科学的エビデンス蓄積と透明性確保を両立
他社が参考にすべき点
海運・物流会社が参考にすべき設計思想3点:
- 既存インフラの「再定義」: バラスト水・冷却水系統という既存設備を回収プラットフォームとして機能拡張。新規Capexを最小化しながら環境実装が可能
- 既存サプライヤーとの共同開発: 新規ベンダー開拓ではなく三浦工業(既存取引先)と組むことで、技術開発コストと調達リスクを低減
- 研究機関・行政との連携でデータ価値を最大化: 自社だけでデータを抱え込まず、大学・環境省DBへ提供することでサードパーティによる検証・活用が進み、社会的信頼性が向上
