概要
GHG(温室効果ガス)プロトコルが大規模な改訂を提案している。従来のScope 1/2/3インベントリに加え、企業が気候進捗を示す新たな3つの「排出台帳」を導入する方針が明らかになった。業界からは84%の支持を集めており、2027年Q2にドラフト標準が公表される見通しだ。
実装ステップ
1. 既存のScope 1/2/3インベントリを確認する
現在の排出量算定体制を棚卸しし、3つの新台帳のどれが自社の気候対応実績を最も正確に反映できるかを評価する。
2. 市場ベース手段台帳(Market-Based Instruments Ledger)を評価する
再生可能エネルギー証書(REC)の論理を鉄鋼・セメント等の製品まで拡張した環境属性証書・クレジットを計上する台帳。脱炭素素材の調達実績を可視化したい企業に有効。
3. 企業行動台帳(Company Actions Ledger)を活用する
低炭素技術への投資や低炭素製品の販売による影響を「結果的会計(consequential accounting)」で追跡する。カーボン・インセット的な実績をロジカルに示す手法として注目。
4. 非GHG指標台帳(Non-GHG Metrics Ledger)の適用範囲を判断する
排出量以外の気候行動指標(例:低排出調達品の比率)を測定する。導入支持が3分の1程度にとどまっており、義務化の可能性は現時点で低いが、先進的な開示に活用余地あり。
5. 他標準との相互運用性を確認する
EUのCSRD(企業サステナビリティ報告指令)との整合を優先し、複数報告体制の負荷を最小化する。複数の台帳を合算・相殺しないことが原則とされている。
使うツール・標準
- GHG Protocol Corporate Standard(Scope 1/2/3の算定基盤)
- EU CSRD / ESRS(欧州開示規制との相互運用)
- ISO 14064(温室効果ガス算定・報告の国際規格)
- 市場ベース手段として:再エネ証書(REC/GO)、製品LCAデータ
成功のポイント
- 3つの台帳は相互に独立させて運用し、合算・ネッティングしない
- 「市場ベース手段台帳」はすでにScope 2市場基準に慣れた企業にとって最も導入しやすい切り口
- 「企業行動台帳」は投資効果を定量化する際のIRツールとしても活用できる
- パブリックコメントへの積極参加が最終標準の設計に影響を与える(2027年Q2ドラフト公開後)
日本企業への適用
日本では有価証券報告書・統合報告書でのGHG開示が進んでいるが、「Scope 3以外の実績をどう示すか」という課題は未解決のままだ。市場ベース手段台帳は、グリーン電力証書やJ-クレジット活用実績を正式に計上する根拠となりうる。企業行動台帳は、EVシフトや省エネ設備投資の効果をサプライヤー・投資家向けに開示する際に有効な枠組みとなる。2027年のドラフト公開後に即座に対応できるよう、今から内部の算定プロセスを新台帳に対応可能な形に整備しておくことが推奨される。
