序章
Introduction
Rafael Leal-Arcas
本書の序章では、持続可能なエネルギー転換にはトップダウンのガバナンスから市民参加型のボトムアップへのシフトが必要だと主張する。市民や「プロシューマー」がエネルギーガバナンスの新たな担い手となり、分散化・民主化・デジタル化・規制緩和・脱炭素化を推進する役割を強調する。EUの事例に基づき、供給主導から需要側政策への転換と新たなエネルギー市場の形成を論じる。
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Introduction
Rafael Leal-Arcas
本書の序章では、持続可能なエネルギー転換にはトップダウンのガバナンスから市民参加型のボトムアップへのシフトが必要だと主張する。市民や「プロシューマー」がエネルギーガバナンスの新たな担い手となり、分散化・民主化・デジタル化・規制緩和・脱炭素化を推進する役割を強調する。EUの事例に基づき、供給主導から需要側政策への転換と新たなエネルギー市場の形成を論じる。
Smart Grids and the Reconfiguration of Citizen Participation
Rafael Leal-Arcas
EUを中心に、スマートグリッドの発展がエネルギーガバナンスと市民参加に与える影響を分析。脱炭素化やエネルギー安全保障への貢献と、データガバナンスや社会的公平性のリスクを議論し、プロシューマーの役割や包摂的な規制枠組みの必要性を強調している。
Scenario-based dynamic LCA for electricity consumption in the Netherlands: Investigating the environmental sustainability
Luke Quinn, Dilip Khatiwada
オランダの電力システムを対象に、静的・動的LCAを統合し、2030年の電源構成シナリオと新たな分散型発電ソリューションの導入効果を評価。家庭の電力消費でGWPが1271 kgCO2-eqから622 kgCO2-eqに削減される一方、太陽光拡大による鉱物資源枯渇の増加も示した。時間的変動を考慮する動的LCAの重要性を実証し、移行経路の環境影響をより正確に捉える手法を提供している。
Modeling large-scale industrial demand response: Insights for Europe’s energy transition
Laura Paradiso, Mostafa Barani, Pedro Crespo del Granado +1
欧州の脱炭素政策で変動再エネが拡大する中、産業用ダイレクト・ロードコントロール(DLC)の価値を長期投資計画モデルEMPIREで評価。28カ国2025-2060年のデータで、DLCにより系統コストを0.44-1.47%削減し、Li-ion蓄電池の利用率を最大18.49%低減できると示した。
Environmental justice and just transition in Harris county, Texas: industrial burden, vulnerability, and policy pathways
Bidemi Ayinde, Lucas Deshon, Waaiz Hussaini +3
本研究は、テキサス州ハリス郡を対象に、環境負荷と健康被害、ガバナンスの不平等、政策経路の交差を分析した。地理空間分析、統計モデル、PM2.5による健康影響推定、ステークホルダー分析、シナリオ比較を組み合わせ、不公正な制度が環境負荷を構造的に強化していることを示した。包括的な介入が長期的に高い純便益をもたらすとし、公正なエネルギー移行には統合的なガバナンス設計が不可欠だと結論づけている。
Energy-saving initiatives at Hachinohe Plant
(著者不明)
八戸工場における省エネルギーの取り組みを紹介する事例報告。設備改善や運用改善によるエネルギー使用量の削減、コスト低減を目指した現場レベルの施策について述べられているとみられる。定量的な効果は明記されていないが、工場単位の省エネ・脱炭素実践例として参考になる。
Standard Specification for Power Energy Services for Distribution System Congestion and Voltage Management via Group Management of Distributed Power Sources [Established] (JEC-TR-59012:2026)
(著者不明)
分散型電源(DER)のグループ管理により配電系統の混雑・電圧管理を行う電力エネルギーサービスの標準仕様(JEC-TR-59012:2026)が制定された。本規格は系統運用者とアグリゲーター等の連携を想定し、再エネ等の分散型電源を効率的に系統へ統合するための技術要件を示す。日本の配電系統への再エネ大量導入と系統安定化の両立に資する。
Geomorphic and Greenhouse Gas Dynamics of Restoration and Flood Events in Streams in a Karst Agricultural Landscape
Caroline Gottschalk, Emily H. Stanley, Eric G. Booth +1
ウィスコンシン州のカルスト農業地域の河川を対象に、修復区間と非修復区間で河道形態とCO2・CH4拡散フラックスを比較した。洪水と修復が温室効果ガス排出に与える影響を評価し、修復が形態変化を伴わずとも排出を増加させる一方、洪水は短期的な排出増と関連することを示した。
Greenhouse Gas Flux Response in Biochar‐ and Compost‐Amended Lawn Soils Under Simulated Water Saturation Conditions
Angel Salinas, Chu‐Lin Cheng, Engil Pereira +2
芝生土壌にバイオチャー・堆肥を施用し、飽和・半飽和・不飽和条件でのCO2・CH4・N2Oフラックスを測定。堆肥区でCO2放出が高く、バイオチャー区は保水性が高い一方、飽和時にCH4とN2Oのパルスが発生。施用資材と温度・水分条件がGHG排出に及ぼす影響を示した。
Energy Transition in the Cement Industry: Decarbonization Pathways and the Role of Hydrogen
Alessandro Franco, Wilfried Marius Simo Toukam
セメント製造の代表的なマス・エネルギーバランスに基づき、熱需要と石灰石由来のプロセス排出を定量化。省エネ、クリンカ代替、代替燃料、電化、水素、CCSの各脱炭素経路を比較。水素は酸素燃焼と組み合わせることで燃焼由来排出を50~200kgCO2/セメントトン削減可能とし、深い削減にはCCSが必要と結論。
Green hydrogen transitions deepen socioecological risks and extractivist patterns: evidence from 28 prospective exporting countries in the Global South
Tunn J.
グローバル・サウスの28か国を対象に、グリーン水素輸出の拡大が社会生態的リスクや資源収奪のパターンを強化する可能性を実証的に示した研究。低炭素エネルギー転換の影の側面を明らかにし、国際的な水素政策における環境・社会ガバナンスの重要性を提起する。
Government backed credit guarantee schemes for offtaker counterparty risk under corporate power purchase agreements
Schütt J.
本論文は、企業向け電力購入契約(PPA)において、オフテイカー(購入者)の信用リスクを政府保証により軽減するスキームを分析する。これにより再生可能エネルギー調達の資金調達コスト低下と市場の信頼性向上が期待される。
A project-based system for including farmers in the EU ETS
Brandt U.S.
本論文は、EU排出量取引制度(EU ETS)に農家を参加させるためのプロジェクト型制度を提案する。農業由来の排出削減・吸収プロジェクトをクレジット化し、市場メカニズムを通じて農家に経済的インセンティブを与える枠組みを示す。これにより、農業部門の脱炭素化と所得支援を両立する政策設計を目指す。
Is the EU Sustainable Finance Disclosure Regulation ( SFDR ) an Opportunity or a Boundary for European Thematic Mutual Funds? A Difference‐in‐Differences Approach
Mercedes Alda
EUのSFDRが導入したArticle 8/9のESG商品分類について、欧州テーマ型ファンドを対象に差分の差分法で分析。SFDR導入後、Article 8/9ファンドは非ESGファンドとパフォーマンスや資金フローに有意差がなく、SDGsへの進捗も限定的であることを示し、商品定義の曖昧さが「カテゴリ-ストレッチング」を招くことを実証した。
Ensuring the Reliability of Non-Financial Reporting: Organizational and Legal Aspects
Elena G. Antonova
本稿は非財務報告(ESG情報)の信頼性確保に関する組織・法的課題を論じる。ESG原則への準拠は企業変革や融資・投資判断に重要であり、利害関係者は信頼できる情報を得る権利を有する。国際経済協力の進展を踏まえ、ロシア企業への立法要件の必要性を指摘する。
Climate change mitigation and adaptation in the agri-food sector: global and Russian experience
M. A. Kotomina, A. V. Radikevich, G. A. Nazarenko
農業食料部門は世界の温室効果ガス排出量の約30%を占める。ロシアでは農業由来排出は総排出の5%未満で連邦レベルの優先課題ではないが、地域レベルでは節水技術や精密農業などの適応策が進む。気候変動の影響拡大に伴い、ロシア農業部門の緩和・適応策の強化が求められる。
A REVIEW ON ECOLOGICAL SIGNIFICANCE OF WETLANDS FOR BIODIVERSITY CONSERVATION IN SRI LANKA
ST Poornima
スリランカの湿地、特に都市部の湿地の生態学的重要性を体系的にレビュー。洪水調節、炭素隔離、生息地提供などの生態系サービスを整理し、都市化や汚染による劣化を指摘。自然に基づく解決策(NbS)としての湿地の都市インフラ統合を提案している。
Climate Migration and Environmental Pressure: A Global Panel Analysis of the Migration–Emissions Nexus
Rui Alexandre Castanho, Gözde Meral, Paulo Ferreira +3
気候変動と移民の関係を、高脆弱性8カ国の2000〜2024年パネルデータで検証。移民と気候変動の双方向因果、経済成長から気候変動への一方向因果、人口から移民への因果などを確認し、気候移住の複雑な要因連関を実証した。
How does ESG shape corporate green innovation? A comprehensive review based on bibliometric and systematic literature analysis
Yuhang Yang, Alexios Kythreotis
本レビューは、CiteSpaceを用いたビブリオメトリクス分析と系統的文献レビューにより、ESGと企業のグリーンイノベーション(GI)の関係を包括的に整理した。792件の文献(2008~2024.10)を分析し、研究が急成長段階にあること、媒介・調整・文脈要因が複合的に関与することを示した。企業の持続可能な変革に向けた示唆を提供する。
Low‐Frequency, Renewable Mechanical Energy–Driven Piezocatalysis for Energy Generation and Environmental Remediation
Shadi Asgari, Ghodsi Mohammadi Ziarani, Alireza Badiei +1
本レビューは、低周波の再生可能機械エネルギーを利用したピエゾ触媒による環境修復とエネルギー回収の可能性を概説する。有機染料や医薬品の分解、CO2還元、H2生成などの応用が示され、自然機械エネルギーの電力変換によるエネルギーハーベスティングも紹介する。